灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 531字・約1分
入社して一か月で、主人公は会社にも上司にも耐えきれなくなっている。労基署への告発を考えたところで、同じ境遇の先輩に止められ、仮眠室へ案内される。私が気になるのは、この先輩の行動だ。苦しさを分かち合えるはずの人が、職場を変えるための動きを止める。その理由として課の秘密が明かされる構成に、不穏さがある。
藤原貴子は、男社会の会社で課長まで上り詰めた人物だ。ただ、その経歴が部下への横暴さを正当化するわけではない。仕事では威圧的なのに、親密な相手には違う顔を見せる。この二面性を知ったとき、主人公が彼女への怒りをどう扱うのかに目を向けたい。
私には、貴子個人と同じくらい、彼女が課内で庇護されていることが引っかかる。問題のある上司だと分かっていても、周囲には今の状態を保つ理由がある。主人公が知る秘密は、彼女の意外な一面を明かすと同時に、なぜこの職場が変わらないのかを示すものにも見える。
上司への鬱憤を晴らすという入口から、主人公自身も課の事情に関わっていく。そこで怒りが収まるのか、別の感情に押し流されるのか。貴子の印象が変わったとしても、主人公を追い詰めた働き方まで解決したとは限らない。私は、その二つをどう描き分けているのかを、この作品の気になる点として挙げたい。
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