灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 547字・約1分
家を飛び出したのぼるが、住む場所も決まらず途方に暮れているところへ、日向が現れる。彼女に紹介された長屋には、入居の条件と住人たちの秘密がある。困っているときの親切はありがたいけれど、条件が付けば話は変わる。私は、のぼるが日向を頼る気持ちと、まだ知らない場所へ足を踏み入れる不安が重なる、この始まりに惹かれる。
日向はサキュバスという人ならざる存在だ。それでも、二人の関係を考えるときに気になるのは、互いを気遣うところだ。助ける側と助けられる側として出会った二人が、相手の様子を見ながら距離を縮めていく。のぼるにも好青年としての魅力があることで、日向だけに目を向けず、二人のやり取りを追いたくなる。
長屋という舞台もいい。住む場所が見つかることは、のぼるにとって生活の足場を得ることでもある。その場所に秘密があるなら、安心して暮らせるかどうかは、建物よりもそこにいる人との関係にかかってくる。日向の親しみやすさが、この不思議な長屋をどう見せるのかが気になる。
私は、秘密の仕組みを知る楽しみとともに、日向との出会いがのぼるの日々をどう変えるのかに目を向けたい。行き場のなかった彼に、住まいと人とのつながりが同時に生まれる。その変化を軸にすると、二人が相手を大切にする様子にも、いっそう関心が向く作品だ。
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