灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 553字・約1分
夏音からの告白を、主人公は断ってしまう。嫌いだったからではなく、彼女と付き合う自分を想像できなかったからだ。私が引っかかるのは、その戸惑いに相手を傷つける一言まで添えてしまうところだ。返事をするだけでも精いっぱいだったのだろう。それでも、自分を守るために口にした言葉は、夏音にとっては拒絶として残る。
昔から隣にいた幼馴染でも、成長するにつれて付き合う人や周囲からの見られ方は変わる。主人公は、自分と夏音の違いを意識するあまり、彼女が自分を選んだことを受け止められない。好意を向けられた場面でさえ、相手の気持ちより自分への評価が先に立ってしまう。その狭さが、後の後悔につながっている。
断った後で夏音が別の相手と近づいても、主人公には止める理由がない。けれど、気持ちが整理できているわけでもない。自分で選んだ結果なのに苦しいという感情は、身勝手だと切り捨てるだけでは捉えきれないと思う。私は、彼の言動には賛成できなくても、失ってから考え続けてしまう弱さには目を向けたい。
題名の「あの日」は、もう返事を変えられない時間を指している。「好き」と言えていた自分を想像するほど、実際に言った言葉との差が広がる。夏音の時間が先へ進む一方で、主人公は同じ場面に立ち戻ってしまう。その歩調の違いに、取り返せなさが残る物語だ。
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