灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 546字・約1分
柔道一筋だった梓が、大学に進んで新しい生活を楽しみはじめる。幼馴染の紗英が口にした軽い冗談をきっかけに、もう一人の幼馴染である拓馬との関係も変わっていく。私が気になるのは、昔から知っている相手を、今までとは違う目で見るようになる過程だ。親しさがあるから踏み出せるのか、親しいからこそためらうのか。その両方を考えたくなる。
梓は強気で、拓馬は真面目で誠実。同じ関係に踏み込んでも、二人の構え方には違いがありそうだ。新しいことを試してみたい気持ちと、自分がどう変わるのか分からない戸惑い。梓にとって拓馬は、気軽に付き合えるはずの相手から、日々の意識を占める存在になっていく。
二人の合意があっても、すぐには先へ進まず、日を決めて待つ。この間の置き方に私は惹かれる。予定が決まれば、それまで何でもなかった時間にも相手のことを考える余地が生まれる。幼馴染として積み重ねてきた時間に、まだ知らない一面への期待が加わる。その変化を描くうえで、待つ時間はよく効いていると思う。
「たった一度」のつもりで始めた関係を、二人が同じように受け止め続けられるとは限らない。互いに惹かれるほど、最初の約束では気持ちを言い表せなくなる。私は、梓と拓馬が背伸びをしながら、自分たちの関係をどう捉え直していくのかに目を向けたい。
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