灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 556字・約1分
父の跡を継いで、妖怪専用の賃貸マンションへやって来た主人公。そこには、夫を亡くした雪女の雪乃が暮らしている。私が気になるのは、生活に困っている彼女を助けるはずだった主人公が、妖怪を操れる指輪を手にすることで、その関係を変えてしまうところだ。相手のために動く気持ちと、自分の望みをかなえたい気持ちが、ここで衝突する。
雪乃は人付き合いが苦手な人物だ。話しかけにくい相手なら、何を考えているのか知りたくなるし、距離を縮める難しさもある。けれど、指輪を使えば、その難しさを飛び越えられてしまう。私には、この力が便利であるほど、主人公が雪乃自身の言葉を聞く機会を失っていくように思える。
家賃を滞納していることも、二人の立場を考えるうえで外せない。住まいを管理する側と、そこで暮らす側には、もともと力の差がある。そこへ相手の意思に干渉できる道具が加わる。生活上の問題と、本人が何を望むかは別に考える必要があり、その境目を主人公がどう扱うのかに目を向けたい。
父の部屋に指輪があった理由も、雪乃の気持ちも、主人公にはまだ分からない。私は、その分からなさが残るところに惹かれる。指輪によって思いどおりになったように見えても、相手を理解できたとは限らない。二人のやり取りを、雪乃の意思がどこにあるのか気にしながら追いたくなる作品だ。
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