灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 539字・約1分
死ぬために出会った二人のうち、木坂が生きたいと思いはじめる。『どうせ死ぬから、好きにして』で私が気になるのは、その変化が自分だけに向いていないことだ。虫原にも生きていてほしいと願うようになる。同じ目的で集まったはずの二人が、ここで違う方向を向くことになる。
木坂の気持ちが変わっても、虫原が抱えてきた絶望まで消えるわけではない。自分が生きたくなったから、相手にもそうなってほしい。その願いは切実だけれど、二人が同じ速さで気持ちを変えられるとは限らない。私は、木坂が虫原の思いをどこまで受け止められるのかに目を向けたい。
題名の「どうせ死ぬから」には、その先を考えなくていいという投げやりな響きがある。ところが、相手との時間に幸福を感じれば、その言葉では片づけられなくなる。もう終わるつもりだった人生に、失いたくないものができてしまう。木坂の未練が、虫原とこれからも一緒にいたいという願いへ変わるところに、この物語の大きな転換がある。
二人が抱える問題は、出会いだけですべて解決するほど簡単ではないだろう。だから私は、結末の明るさとともに、その後の暮らしも気になる。何でもない日に話をして、相手の不調に気づき、ときには支えてもらう。そんな時間を二人が重ねていけるよう願いたくなる作品だ。
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