灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 514字・約1分
理沙と雄也は、互いに責任を取れるようになるまで待とうと約束する。『カレとの約束』で私がまず目を向けたいのは、二人が自分たちで境界を決めていることだ。ところが翌日、その出来事を知ったコーチが、退学や推薦の取り消しをほのめかす。二人で交わした約束に、立場の強い大人が介入してくる。
理沙が許しを請うのは、提示された条件を望んでいるからではない。自分や雄也の将来を脅かされ、逃げ道を狭められているからだ。校内での振る舞いを指導する立場を、個人的な要求のために使う。その権力の使い方に、この物語の苦しさがある。
私は、彼氏を守るためという説明だけで、理沙の置かれた状況を片づけたくない。誰かを大切に思う気持ちが、脅す側に利用されている。雄也との関係を守ろうとするほど、一人で要求を抱え込まされる構図が痛ましい。相手への思いやりと、被害を受け入れる義務は結びつかないはずだ。
題名の「約束」は、本来なら二人の未来に向けたものだった。その未来を人質に取られることで、言葉の響きまで変わってしまう。人物の反応が丁寧に描かれているという点も、私には重く感じられる。理沙の戸惑いや恐怖をどう描き、彼女自身の意思をどこに残しているのかに注目したい作品だ。
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