灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 529字・約1分
奨学金を返しながらアルバイトをする主人公と、同じ職場でパートをしている秋山さん。『バイト先の人妻、秋山さん。』は、職場で顔を合わせる相手の家を訪ねたことから、関係が変わっていく。私が気になるのは、普段の仕事ぶりを知っていても、私生活についてはほとんど知らないという距離だ。
主人公は以前から秋山さんを意識している。ただ、その関心は、彼が外見から抱いた想像に寄っている。家の手伝いを頼まれ、偶然彼女の私物を見つけることで、知らなかった一面に触れる。私は、その発見をきっかけに、彼のなかの秋山さん像がどう変わるのかに目を向けたい。
自宅は、職場とは違う役割で過ごす場所でもある。パート仲間として接していた人が、そこで何を話し、どんな表情を見せるのか。秘密に触れる出来事だけでなく、その前後の会話が気になる。見つけたものから事情を察することと、本人の気持ちを聞くことには違いがあるからだ。
主人公の顔を簡略化して描いている点も、人物の見せ方として関心がある。秋山さんの姿や反応に視線が向きやすくなる一方、彼自身のためらいや判断はどこから伝わるのだろう。二人は関係が変わった後も同じ職場で働く。私は、家で知った一面が、普段の接し方にどう影響するのかまで追いたくなる作品だ。
この日記は常夜灯の運営者の見立てです。販売元の紹介文やレビューの転載ではありません。







