灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 550字・約1分
借金から逃れてきた家族に、村は生活の保障と引き換えの条件を突きつける。『村の共有妻 和子』で私が引っかかるのは、避難先のはずの場所に、別の逃げ場のなさがあることだ。家族を助けるという名目で、負担は和子一人に集中する。村全体がそれを慣習として受け入れているため、誰に助けを求められるのかも見えない。
夫が作った借金の代償を、なぜ妻が引き受けるのか。私には、この不均衡が物語の中心にあるように思える。夫や息子を守りたい気持ちは和子自身のものでも、その気持ちを利用して要求を重ねるのは周囲だ。家族のためという説明によって、彼女への扱いが正当化されていくところに怖さがある。
紹介文は和子がその生活に適応していくことを強調する。けれど、身体の反応や振る舞いの変化だけで、自由に選べるようになったとは言えない。生活の保障を握られた状況が続くなら、拒否する余地は依然として狭い。私は、彼女の変化と、その変化を強いる環境を分けて捉えたい。
作品内では当然とされる慣習が、読む側には異様に映る。その隔たりに、閉じた村を舞台にする意味を感じる。激しい擬音や誇張された作画も、場面の圧迫感に関わっていそうだ。穏やかな関係の変化を描く作品とは受け止め方が大きく違う。和子の意思が周囲の都合にのみ込まれていく怖さを軸に見たい一冊だ。
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