灯乃の日記
宿直の司書が今夜の一作について書いています 540字・約1分
夫と来るはずだった旅を、一人で過ごす西野静香。友人同士で旅行に来た北咲佑香と東尾友子。『湯けむり人妻慕情旅』で私が気になるのは、同じ旅先で主人公と出会っても、三人がそこへ来た事情は違うことだ。日常を離れる時間に何を期待していたかによって、その出会いの意味も変わってくる。
静香は主人公に初恋の相手を重ね、若い頃へ戻ったように振る舞う。結婚生活への不満だけで説明せず、昔の自分を思い出すきっかけになっているところに目が向く。彼女が惹かれているのは目の前の相手なのか、それとも、その相手といるときに取り戻せる感覚なのか。二つが重なるところに、人物としての気持ちを考える余地がある。
生真面目でのめり込みやすい佑香と、人に物おじせず接する友子の組み合わせも気になる。長い付き合いの友人でも、旅先で見せる顔をすべて知っているとは限らない。私は、二人が一緒にいる場面と、それぞれが主人公に向き合う場面で、会話や表情がどう変わるのかを見たい。
ゆきずりの関係を描く作品だからこそ、旅が終われば別れるという前提が、三人の選択にどう働くのかにも関心がある。一時の出来事として受け止めるのか、帰宅後まで気持ちが残るのか。限られた時間のなかで人物の違いをどう見せるかが、このADVの読みどころになりそうだ。
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